【MTG公式】記事情報:『タルキール覇王譚』デザイン・ハンドオフ、パート1





マジック:ザ・ギャザリングのセットデザインは複数の段階に分かれており、初期デザインチームが作成したコンセプトを後期デザインチームへと引き継ぐプロセスが存在します。
今回は、その中でも特に人気の高い『タルキール覇王譚』のデザインハンドオフ文書について解説します。
『タルキール覇王譚』の基本構造とデザイン目標
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セットの基本コンセプト
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『タルキール覇王譚』は時間改変をテーマとしたブロックであり、3部作の第一弾。
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メインプロットはプレインズウォーカー「サルカン・ヴォル」が過去へ戻り、ドラゴンを救うことで歴史が大きく変わるというもの。
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各セットごとに異なる時代を描き、「現在」「過去」「改変後の現在」をゲームプレイに反映。
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セットデザインの目的
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歪んだ世界観を表現するため、5つの氏族を明確に設定。
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氏族間の相互作用を意識し、流動的な勢力図を構築。
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プレイヤーに対して情報の不確実性を持たせるため、「変異」メカニズムを導入。
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3色(楔)テーマを採用し、多色環境を促進。
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5つの氏族とそのメカニズム
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アブザン(白・黒・緑):耐久の氏族
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キーワード能力:「長久」
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戦略:「耐えることで勝利をつかむ」
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防御を重視し、時間が経つほど盤面が強くなる。
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デベロップメント(開発チーム)の調整により、最終的には「長く戦場に残るほど強化される」メカニズムに変更。
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ジェスカイ(青・赤・白):知略の氏族
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キーワード能力:「Kung fu」→最終的に「果敢」へ変更。
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戦略:「頭脳と技を駆使して戦う」
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呪文を唱えることでクリーチャーが強化されるメカニズム。
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「戦闘中の駆け引き」を重視し、テンポを取るプレイスタイルを意識。
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スゥルタイ(黒・緑・青):冷酷の氏族
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キーワード能力:「探査」
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戦略:「リソースを最大限に活用し、墓地を資源とする」
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『未来予知』で登場した「探査」を採用し、カードコストの削減を可能に。
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開発段階で過去の「探査」カード(「死に際の喘ぎ」、「墓忍び」など)を再録する案も検討されたが、最終的にはオリジナルカードが中心に。
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マルドゥ(赤・白・黒):速度の氏族
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キーワード能力:「疾駆」
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戦略:「速攻を活かした攻撃的戦術」
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クリーチャーで攻撃したターンに効果を発揮する能力。
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最終的に、一部のインスタントやソーサリーにも採用。
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ティムール(緑・青・赤):獰猛の氏族
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キーワード能力:「Power-up」→最終的に「獰猛」へ変更。
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戦略:「大型クリーチャーを活用する」
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クリーチャーのパワーが一定値以上で追加効果を得るメカニズム。
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ミッドレンジ戦略を促進し、徐々に強くなるプレイを推奨。
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ゲームプレイの工夫と進化
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氏族の相互作用を強調
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『アラーラの断片』での「多色セットの調整不足」を反省し、5つの氏族間の相互作用を明確に設計。
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各氏族が単独でも機能しつつ、隣接する氏族とのシナジーを生むように調整。
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多色環境の推奨
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「楔」3色を軸とすることで、デッキ構築の幅を広げる。
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多色カードを多く採用し、プレイヤーに色の選択肢を持たせる。
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「変異」の活用
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相手に情報を隠しながらプレイする戦略を強調。
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セット全体の「不確実性」を増し、駆け引きを促進。
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まとめ
『タルキール覇王譚』は、時間改変をテーマにしたブロックの第一弾として、多くの挑戦と工夫が込められたセットです。
デザインの初期段階では、氏族の数や構成が試行錯誤されながらも、最終的にウェッジ3色の環境が採用されました。
特に、
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各氏族の独自メカニズムの設定
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多色環境の構築とデッキの自由度の確保
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情報の不確実性を活かしたプレイ体験の提供
これらの要素が組み合わさることで、戦略性の高いゲームプレイが実現しました。
次回は、『タルキール覇王譚』のデザイン文書の後編について解説します。
それでは、あなたのお気に入りの氏族を見つけてください!
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