【MTG公式】記事情報:デザインファイル: 『ウルザズ・デスティニー』、パート3。

マジック:ザ・ギャザリング(MTG)のセット制作には、多くのカードが試作されながらも日の目を見ずに終わります。
今回の「Design Files」では、1999年に発売されたウルザズ・ディスティニーの制作に携わったマーク・ローズウォーター(通称マロー)が、自らの提出案から実際に採用されなかったカードたちを紹介。
その背景には、後に他セットで花開いたアイデアや、当時の開発方針とのズレが見て取れます。
主な未採用カードとその意図
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非マナサイクリング案(5種)
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「タップ」「ライフ支払い」「土地の生け贄」などをコストにした非マナサイクリングのサイクル。
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サイクリングの多様化を狙ったが、セットのテーマ性から逸脱するとして却下。
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その後『フューチャーサイト』でようやく一部採用へ。
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「フリースペル」の試作群
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使用後に土地を複数アンタップすることで、実質無料となる呪文たち。
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「不実」の問題点もあり、他の類似案(「解放の天使」等)は未採用に。
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強力な死亡誘発能力を持つサイクル
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墓地に置かれた時に大量のパーマネントを破壊したり、手札を捨てさせたりする強烈な効果。
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悪用しやすいため不採用。白のバランス効果は後に「まやかしの預言者」に変更。
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「ブライバリー」など後に採用されたカードの原型
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敵デッキからクリーチャーを奪う「支配魔法」などが『メルカディアン・マスクス』に移植。
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サイクリング付与クリーチャーや、効果的な置換案
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自軍全てのカードにサイクリングを付与する「Slick Wizard」など、当時は冗長と判断されて却下。
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古典的な戦闘トリックや、グリーンの「格闘」系カードの前身
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「Mini Tracker」など、後の「格闘」キーワードに繋がるメカニズムが見て取れる。
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伝説の土地「Yavimaya Forest」
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実質モックス並みの能力を持っており、壊れカードとして全面リデザインへ。
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開発当時の背景とその意義
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キーワード能力の扱い
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当時は「キャントリップ(引き直し効果)」や「サイクリング」「エコー」のような能力は慎重に採用されていた。
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全体に付与するアイデアも試みられたが、テンポ破壊などを理由に不採用が続出。
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破壊的効果への過剰な偏り
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「土地破壊」や「全体除去」の提案が多く見られたが、プレイ体験を損ねるとして多数が没。
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のちの採用・発展に繋がったデザイン
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「祖先の仮面」「袖の下」「Double Coercion」など、後のセットで実現されたアイデアも多数。
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まとめ:没案は「失敗」ではなく「種」
今回紹介された未採用カードたちは、単なる失敗作ではなく、MTGというゲームが進化する過程で必要な「種」としての役割を果たしています。
結果として当時は採用されなかったカードが、後のセットで姿を変えて登場する例も多く、マローのデザイン哲学と創造性の深さが垣間見えます。
特に「サイクリングの多様化」や「グリーンによる戦闘処理」、「死亡誘発サイクル」などは、当時としては革新的な試みでした。
現在ではスタンダードからエターナルまで幅広く活用されるキーワード能力やカードタイプも、こうしたトライアルの積み重ねがあってこそ。
このような裏話を知ることで、私たちプレイヤーもカード一枚一枚に宿る開発者たちの情熱と試行錯誤をより深く感じられることでしょう。
次回は「ファイナルファンタジーセット」のデザインが取り上げられるとのこと。
こちらも楽しみに待ちたいところです。
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